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山口新聞毎週月曜日連載中
シェフの隠し味11−ワインの白、赤は自分流で−
 器が料理のパートナーとすれば、ワインもそうですね。特にフランス料理とワインは切っても切れない関係にあります。
 どちらかといえば高級志向だったフランス料理。一般的ではなかった感がありますが、二十年くらい前だったでしょうか、フランス料理がブームのようになって、お客様がかなり気軽にそうしたお店を訪れるようになり、あわせてワインの人気も高まりました。今やスーパーはおろか、コンビニにもワインが並ぶようになり、ワインはすっかり“庶民派”。
 これは私どもにとっても、うれしいことです。
 よく「魚料理には白ワイン、肉料理には赤ワイン」と言います。映画007シリーズ「ロシアより愛をこめて」で、確かオリエンタル急行のビュッフェでした。ジェームス・ボンド(ショーン・コネリー)が同じ英国情報部員と思っていた男(ロバート・ショウ)が魚料理に赤ワインを注文するのを見て、偽物だと見破るシーンがありました。英国紳士たるもの、そんな注文をするはずがない、というわけです。
 大変面白い筋立てですが、「魚に白、肉に赤」はマナーの問題ではないんです。ええ、あくまで相性の問題。ですから、そんなことで気を遣う必要はありません。
 日和庵に来てくださるお客様にも、最初から赤ワインで通す方もいらっしゃいますし、逆に最後まで白という方もいらっしゃいます。要は白であれ赤であれ、自分流で楽しんでいただければいいんです。余計な気遣いなどせず、楽しく飲む。それが一番です。
 いいワインはそれこそ世界中にあります。最近はヨーロッパに限らず、アメリカ(カリフォルニア)産も人気です。風土・気候など環境によって独特の作品になるワイン。そこがまたワインの面白さですが、日和庵には常時二千五百本ほどが酒蔵に用意してありますので、お好みに応じてお楽しみください。

−ワンポイントレシピ−
 ワインのお話をしましたから、今月のレシピは夏のデザートとして好評のワインゼリーを。
(1)白ワイン(辛口)500ccを用意。70グラムを残して鍋に入れ、強火で沸騰させて少し煮詰め、アルコール分を飛ばす。
(2)これにグラニュー糖120グラムを入れて溶かし、弱火にして戻したゼラチン12グラムを加え、溶けたら火からおろす。
(3)ワインの風味を楽しむため最初に残しておいたワイン70グラムを加え、容器に移して氷水であら熱を取って、冷蔵庫で固める。

(下関市・和欧風創作料理「日和庵」オーナーシェフ)
2006.9.04山口新聞掲載



山口新聞毎週月曜日連載中
シェフの隠し味10−「器」と「厨房」へのこだわり−
  「ステキなお皿ですね」
 時折、お客様からそう言っていただくことがあります。そんな時は、料理をほめていただいた時と同じくらいうれしいものです。
 本当にこだわってこだわって集めた器なのですから、それを認めていただいて気分が悪かろうはずがありません。
 日和庵を始めることを決めてから、窯元を何軒も訪ね歩きました。これと思うものを集め、料理を盛った時、テーブルに置いた際のイメージを考えながら、さらに絞り込んで選んだものです。料理をどんな器に盛るか、これはとても重要なことです。古くから器を大切に考えてきた和食。器はいわば演出品の一つであり、料理の“隠し味”。和欧風創作料理の日和庵としても当然、器の一つ一つにこだわりたかった。ですから、「素敵な器ですね」と言ってくださるのは大いなる喜びというわけです。
 日和庵に来ていただくとおわかりのように、厨房がオープン形式になっています。お客様には私どもの仕事ぶりを直接見ていただけますし、私どもはお客様の様子を確認できます。
 お鮨屋さんで、カウンターを挟み、大将とお客様がコミュニケーションをとりながらお鮨を握り、それを頂く。「和」の良き原型がそこにあります。「洋」もいつしかそれを取り入れて、オープン形式のレストランが増えてきました。
 お客様が料理をおいしく食べていただいているか、器は気に入っている様子か、厨房でそういったことを確認しながら次の料理を作るのは気合いが入ります。同時に次の料理はどんな皿に盛ろうか、どんな風に見せようかと考えるのも結構楽しいもの。それもまた、料理人とお客様とのコミュニケーションではないでしょうか。
 時間的な余裕があれば、なるべくお客様の前に顔を出し、料理の説明などをするように心がけてはいます。お話をすることでお客様の感触もよく分かり、創作の参考にもなりますが、店が立て込んでいますとそうもいきません。しかし、オープン厨房のおかげで最低限必要なコミュニケーションは取れますし、店内の様子をうかがい知る事はできます。言葉は届かなくとも、お客様の気持ちは伝わります。
 「和」の良さを「洋」に生かそうとフランスで取り入れ、逆輸入の形で入ってきたオープン厨房。日和庵にも取り入れて本当に良かったと思っています。

(下関市・和欧風創作料理「日和庵」オーナーシェフ)
2006.8.28山口新聞掲載



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シェフの隠し味9−下関にふさわしい「食の祭典」−
 この頃、よく「やまぐち食彩店」のことが話題になります。先日も下関市内で十三番目になる食彩店・蕎麦(そば)工房の記事が載っていました。「地産地消」は今やすっかり定着した感のあるフレーズ。そうした中で地元の食材を使ったメニューにこだわる「やまぐち食彩店」は本当にいい企画だと思います。また、下関ブランド三十六品目も認定されたばかりです。これも私には興味深いものでした。
 「日和庵」もできれば「やまぐち食彩店」のお墨付きをいただきたいのですが、世界に食材を求めなければいけない店としては、残念ながらその資格がありません。しかし、地元のいい食材はできるだけこだわって使いたいという思いはあります。フグなどはその代表格ですよね。
 フグといえば、フグ延縄漁発祥の地を自負する周南市に、フグ料理を目玉にした「徳山フグ横町」がオープンしたそうです。
 周南は周南で本場下関を向こうに回し、フグを売り込みたいと意欲を燃やす。そして互いに競い合うことで、フグがさらに全国にPRされるのはいいことではないでしょうか。
 フグや鯨に続き、このところすっかり名を上げている「下関のアンコウ」も、これまで本場を自認してきた茨城県と競い合い、イベント企画でアンコウ鍋対決までやりました。それもまた一興。PR効果もかなりあったようです。
 料理人としては、食に関することはやはり興味も関心もあり、情報にもつい敏感になってしまいますが、いま最も気になるものといえば、秋の国民文化祭2006でしょうか。下関では十一月三日〜五日、海峡メッセなどで「食の祭典」が開催されます。どんな内容になるにせよ、文字通り食文化の祭典。会場に足を運ぶ機会があるのかどうか分かりませんが、大いに興味をそそられます。
 当欄で書いたように、新鮮な食材が豊かで魅力的な下関で、国民文化祭の数あるイベントの中から「食の祭典」を開くことになったのはさすがです。どなたが立案し、どなたが決定したのか、下関で開催する最もふさわしいイベントではないでしょうか。
 他にも和太鼓フェスティバルやミュージカル、社交ダンスフェスティバルなどプログラムは多彩なようですが、料理人としてはうれしい「食の祭典」です。

(下関市・和欧風創作料理「日和庵」オーナーシェフ)
2006.8.21山口新聞掲載



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シェフの隠し味8−人生はフルコース−

 帝国ホテルの元総料理長、村上信夫先生をモデルにしたドラマ「人生はフルコース」がNHKで放送されました。
 ドラマにあったように、一九三九年(昭和一四)に帝国ホテルのコックになった村上先生は、フランス留学を経て東京オリンピックの選手村料理長を務めるなど、フランス料理の草分け的存在。
 しかし、私たちフランス料理を学んだ者にとっては、いわば“神様”のような人といっていいでしょう。
 残念ながら、昨年八月に亡くなられましたが、村上先生と私は少々ご縁がありました。下関でIWC(国際捕鯨委員会)の総会が開催された時、村上先生も来関され、各国から集まった人たちに鯨料理をお出しする、その指揮をとられたのです。
 当時、私はシーモールパレスに勤めていましたが、先生の指名を頂いて鯨料理のスタッフに加わりました。それ以前に二度ほどディナーショーをご一緒させていただいたことがあり、先生はその縁で指名してくださったのでしょう。
 一般のレストランでは、まずメニューにない鯨料理。しかも外国の方々の口に合うものというのでメニューを作る時はかなり悩みましたが、これが幸いにも大変好評でしたので、村上先生から「たいしたものだ」とお褒めの言葉をいただきました。
 そして、「東京に来い」と誘ってくださったのです。もし、その時帝国ホテルに行っていたら、私の料理人生はまた別のコースを歩むことになったでしょう。「人生はフルコース」。まさにその通りだと思います。
 鯨の街・下関では、鯨料理は「和」が中心ですが、「洋」としてとらえた場合、独特の風味からもいろいろ規制がありますが、その時は鯨のスモーク、テリーヌ、鯨の冷製スープなどをお出ししました。
 イメージ通りできたと思いましたが、何しろ初めての創作鯨料理です。それはもう各国の人たちの反応が気になりましたよ。
 会場を見ていますと、食べた人たちが村上先生のところへ駆け寄って「ブラボー!」「トレビアン!」と口々に言っているではありませんか!本当に嬉しい光景でした。
 今のところ日和庵で鯨料理をお出しすることは考えていませんが、かつて捕鯨基地として栄えた街ですから、鯨料理が食文化として脈々と継承されていけるといいですね。そのためには調査捕鯨から商業捕鯨再開へとつながってほしいものです。村上先生もきっとそれを望んでおられるに違いありません。

(下関市・和欧風創作料理「日和庵」オーナーシェフ)
2006.8.7山口新聞掲載



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シェフの隠し味7−料理人にとっての「食育」−

 少し前、山口新聞に子供たちによるジャガイモ掘りの記事が出ていました。下関市横野町の畑で、地域の子供たちや保護者の皆さんが二十キロを収穫したということです。命の尊さや食の恵みなどについて学ぶ「こども倫理塾」の催しだそうです。下関は海の幸だけでなく、農作物もおいしいものがとれますから、うれしいですね。
 ジャガイモといえば、夏のメニューに加える定番の冷製スープ「ヴィショワーズ」が日和庵のお客様にも好評です。最初に作った料理人の名前がそのまま付けられた、このジャガイモの冷製スープ。実は私が最初に作ったスープがこれでした。
 後ほどレシピをご紹介しますが、これから特にお盆などで何人か集う時などにはもってこいのメニューではないでしょうか。自分たちで植えたジャガイモを収穫したという倫理塾のお子さんたちは、カレーやポテトサラダにしていただくとのことですが、よければヴィショワーズにも挑戦してみてください。
 命の尊さ、食の恵みについて学ぶという倫理塾のお子さんたち。今、よく言われる「食育」ですね。ファーストフードやレトルト食品の氾濫で、食べることへのありがたさが薄れつつある傾向は、二人の子供を持つ父として、そして一人の料理人として色々考えさせられます。
 季節の恵みを食することへのありがたさ、命をいただくという事への感謝の気持ち。毎日の食事を通して自然と身についていたことが当たり前ではなくなっているのですね。
 父として・・・恥ずかしながら私が家で料理を作ることはまずありませんで、これはさておき・・・。
 料理人として・・・季節の恵みをどうお皿に載せ、形にするか。精いっぱい作った料理をお客様がきれいに食べてくださる。戻ってきたお皿を見てほっとすると同時に、明日への力をお客様から頂戴するのです。料理人にとっての「食育」とは、お客様から私たちが育てていただくことかも知れません。
 料理を通しての、お客様との暗黙のコミュニケーション。この瞬間が料理人の至福の時です。
■ワンポイントレシピ
 夏の定番、ヴィショワーズの家庭用レシピを。
<材料10人分>
 タマネギ200グラム、洋ネギ70グラム、ジャガイモ300グラム、ブイヨン560cc
<作り方>
(1)タマネギと洋ネギをバターで40分ほど焦がさないようにじっくり炒める。
(2)ジャガイモをボイルし、軽く余熱をとって(1)とブイヨンを加え、一緒にミキサーにかけてピューレにし、冷やした後に牛乳でのばし、塩・コショーで味を整えて出来上がり。
 プロの技はもう少し手間がかかりますが、家庭ではこれで十分です。

(下関市・和欧風創作料理「日和庵」オーナーシェフ)
2006.7.31山口新聞掲載



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シェフの隠し味6−氷彫刻の涼感を料理の器で−
 先日、お客様から「暑くなると氷の彫刻を飾るのですか?楽しみにしています」と言われました。私と氷彫刻のことをよくご存知なんですね。飾ることができればそれはまたいい雰囲気でお客様をお迎えすることになり、喜んでもいただけるのでしょうが、スペースを考えると、なかなか難しい面がありますね。
 私が氷の彫刻を手がけたのは下関に来て最初の夏でした。これまでもお話ししたように、料理は食べていただくばかりではなく、見せるということも大切な要素ですから、料理人としては氷彫刻の一つくらいできないと・・・。そう先輩に言われて始めたのです。
 最初に挑戦したのは、確か「芭蕉カジキ」。高さ一メートル、幅五十センチ、奥行二十五センチ、重さ百三十五キロの一本の氷を、ノミやノコで削りながら作品を仕上げていくのですが、これがなかなか難しい。何しろ、もたもたしていると氷が溶けますから、時間との勝負です。練習しているうちに、段々と意欲が湧いてきて大会に出場する気になったのです。
 全国大会の予選が北九州市の黒崎であり、腕試しをしてみようと大いに張り切りました。毎日夜十時ごろ仕事を終えると、下関港の製氷会社で氷を買って、港の岸壁で懸命に腕を磨きました−いや、磨いたつもりだったのですが、出場三回まではさっぱりでしたねぇ・・・。
 大会では時間制限四十分。表現力と共にスピードも要求され、その兼ね合いがなかなかうまくいかないのです。四回目でやっと入賞。東京での全国大会出場を果たしたのは五大会目。全国から集まった腕自慢百人、惨敗でした。
 さらに練習を重ね、翌年中国大会(米子)で二位になり、北海道(旭川)で世界大会に初出場。平成五年、同じ旭川での世界大会で特別賞をいただき、七年に入賞を果たすことができました。作品内容は人物であれ動物であれ自由ですが、やはり躍動感のあるものが認められるようでした。
 結婚式やその他の祝賀会場などでご覧になったことがあると思いますが、催しの主旨や雰囲気にあった氷の彫刻は、演出効果を二倍にも三倍にもしますよね。できれば「日和庵」にも氷の彫刻を飾ってお客様に喜んでいただけるといいのですが、そうもいきませんので、せめて料理の器を彫ってお出ししたいと考えています。

(下関市・和欧風創作料理「日和庵」オーナーシェフ)
2006.7.24山口新聞掲載



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シェフの隠し味5−瞑想感覚で新メニュー−

 いよいよ夏本番です。下関の夏といえば、何といっても海峡花火大会でしょう。
 昨年「日和庵」がオープンして間もなく花火大会があり、その迫力に感動しました。「日和庵」はまさに特等席。何しろ手が届きそうなところにドドーンと大輪の花が開くのです。厨房にいる私は、もちろんずっと見物できるわけもありませんが、それでもオープンキッチンから垣間見る花火に、今夜はどんな料理もかなわないと思ったものです。
 海峡の両岸から次々と打ち上げられる花火−。それは関門連携の象徴のように見えます。
 連携といえば、五月でしたか関門連携委員会が設立され、初会合の席で北九州市の末吉興一市町が「関門特別市」構想をそれこそ大花火のように打ち上げた、という記事が山口新聞に掲載されていました。
 道州制を見据え、将来は下関・北九州両市が政圏の枠を越えて一つになってはどうかというお話だったと思いますが、もしそんなことになったら九州、中国、四国のちょうど真ん中にあたる「関門」は大きく飛躍するかもしれません。「日和庵」もさらに頑張って飛躍できるように目標を大きく持ちたいものです。
 以前、ある人から「地図を逆さにして見ると、まるで世界観が変わる」と教えられたことがありました。下関は中国地域の西端、北九州の東端に位置しますが、見方を変えれば、なるほど「関門は真ん中」です。つまり物事はいろいろな角度から見なさいということなのですね。
 料理も、「この食材はこう使うものだ。こう料理するものだ」と決めつけずに別角度からとらえる柔軟な感覚が必要です。食材の中にどんな料理が眠っているのか、自分の目で、耳で感覚を研ぎ澄まし、新しい料理を作っていくのです。実際、毎月メニューを変更する中で、新メニューを考える時は瞑想にふける感覚と似ています。今までの自分のレシピを基に、同じ素材を全く違うものに作り変えることもしばしば。こうしてできた新しい料理が、お客様に好評だったときの感動がやめられなくて、料理人を続けているのかもしれません。
 あっ、そうそう、少し店のPRをさせてください。「日和庵」はこのほどウッドデッキを大幅に拡張しました。夏は関門の風を感じながらの格別なお楽しみ席になると思います。
 ビアガーデン感覚で、夏の一夜を夕涼みがてらビールとおつまみでちょっと一杯。どうぞお気軽に。亀山花火大会もよく見えますよ。

(下関市・和欧風創作料理「日和庵」オーナーシェフ)
2006.7.17山口新聞掲載




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シェフの隠し味4−「旬」の食材を求めて−

食材原価をできるだけ抑え、いかに美味しく楽しんでいただける料理を提供するか、レストランといえども企業である以上、利潤を求めるのは当然のことです。しかし、お客様から食材が変わったのでは?などと言われてしまっては、レストランとして取り返しがつきません。いえ、恥ずべきことです。
 原価と料理の内容と、その最大公約数をどこに求めるか、レストラン経営の最も難しいところです。
 原価など気にせず、集められるものなら最高の食材を集めたい。それは料理人の限りない願望ですが、しかし最高の食材が最高の料理になるか、お客様の舌を必ず満足させるか、といえば決してそうとも言い切れない。逆に安い食材でも高い評価を頂ける料理は作れる。原価を考えないわけにはいきませんが、その以前に納得のいく食材かどうか、ということが肝心です。
 当たり前のことですが何といっても、新鮮で旬のもの。これがおいしい食材の絶対かつ最低条件です。
 「旬」。やはり魚や野菜などは旬に勝るものはありません。この時期はどこの何がおいしくて、原価はどうなのか。日ごろから情報を収集し、有機栽培農家を訪ね歩くこともします。納得のいくものを仕入れるルートを増やし確保するのは、料理を作る以上に重要なこと。飽食の現代、簡単にいい食材が手に入りそうなものですが、実は本当にこだわる旬のものを仕入れることは、決して簡単なことではないのです。
 今、「日和庵」には世界各国の食材が集まります。
 「こんな食材、使ってもらえないか」「日和庵なら使ってくれるか」と食材業者の方が様々な食材を持ち込んで下さるようになりましたし、「この食材は日和庵でも使っていますよ」と、業者の方々が食材PRに日和庵の名を出すようになったというお話も聞いて、少しずつではありますが、日和庵を認めていただくようになったのかな、と喜んでいます。
 来月になれば一周年。なんとかやってきましたが、「食の街・下関」で日和庵の味を本当に認めていただくには、まだまだ日々勉強です。とにかくこれまでの経験をムダにせず、一歩ずつ進むしかありません。料理には決してホップ・ステップ・ジャンプなどという三段跳びはないものと思いますから。

(下関市・和欧風創作料理「日和庵」オーナーシェフ)
2006.7.3山口新聞掲載



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シェフの隠し味3−料理人を奮い立たせる街−
 シーモールパレスでの二十三年間、さまざまな料理を勉強させていただいたことが、私の料理人生にとって大きな財産になったことは言うまでもない事ですが、食材豊かなこの街は料理人を奮い立たせ、料理への探求心を呼び起こす、大いなる魅力にあふれています。特に私の場合、日本料理の基本的なベースの良さと、学んできたフランス料理をどう融合させるかというテーマを与えてくれた街でもあります。
 私のプロとしての最初の料理は、博多時代に作った「海の幸サラダ イチゴドレッシング」でした。
 お客様にちゃんと召し上がっていただけたかどうか、それはやはり気になるもの。厨房に返ってきたお皿に料理が残っていないかどうか、それこそ目を皿のようにして確かめたものです。
 それから二十五年、料理の道には「これでいい」というものがありません。これは料理に限ったことではありませんが・・・。
 何年経過しようと日々修業。せっかく魅力的な食材にあふれたこの街に根をおろす以上、「さすが下関にある店だ」と言われる店で、その環境を十分に生かした料理を出したいと思うようになったのです。それが私の和欧風創作料理。
 これからどのようなメニューをお出しできるか、お客様には楽しみにしていただきたいと思います。いえ、楽しみにしているのは、私自身かもしれません。
 そうそう、プロになって最初に召し上がっていただいた海鮮サラダのイチゴドレッシングの家庭での作り方をご紹介しておきましょう。
−ワンポイントレシピ−
【海鮮サラダ・イチゴドレッシング】
(4〜5人前)
(1)イチゴのへたを取ってミキサーにかけ、裏ごししてイチゴピューレを作ります。(100グラム程度)
(2)これをボウルに入れて塩、コショウ、砂糖少々をイチゴの甘味を調整しながら加えていきます。
(3)白ワイン15cc、赤ワインビネガー30ccを加え泡立て器でよく混ぜながら、サラダオイル75ccを少しずつ垂らし、混ぜて出来上がり。
※海鮮サラダの材料はタコやイカ、それに白身の魚なら何でも合うと思います。海草も野菜もこのドレッシングにはぴったり。今の時期はまだイチゴが出回っていますし、下関はイチゴの産地でもあります。

(下関市・和欧風創作料理「日和庵」オーナーシェフ)
2006.6.26山口新聞掲載



山口新聞毎週月曜日連載中
シェフの隠し味2−方程式を解くような仏料理−
 料理人になろう−そう人生の目標を最終確認したのは高校二年のときでした。例えば、ごく普通に高校に進み、ごく普通のサラリーマンになどという図式は、私の頭の中にどうしても浮かばなかったのです。また、それが私に適した道だとも思えませんでした。
 実を言いますと、私は“料理小僧”だったのです。小学生の時からよく台所に立ちました。いえ、何か得意な料理を作るというほどではなく、色々手伝うことが好きだったのです。
 そういう素地があって、高校時代はといえば、部活の合間に博多の有名中華料理店でアルバイト。とにかく料理にかかわることに熱中していたんです。中華料理店では、最初ホール係でしたが、厨房に欠員が出て、ギョーザを焼いたりするようになり、料理への関心はますます高まって、その道に進む決心を固めたというわけです。
 高校卒業後、迷わず料理学校へ。和洋中と一通りは学びながらも、頭の中にあったのはフランス料理。一番難度が高い、そう考えたからです。料理学校卒業後、これも迷わず博多のフランス料理レストランへ。夢多き料理人人生のスタートであり、同時にまた厳しい修行の始まりでもありました。
 フランス料理の魅力をひと言でいうのは難しいのですが、いわば方程式を解くようなものといえばいいのでしょうか。どんな食材がどう料理の中に組み込まれているか、食材の形がなくなっていてお客様にも分からない。そこへいくと、イタリア料理は足し算、引き算。見た目に答えが分かりますよね。
 もっとも、このごろはフランス料理も食材のよさを引き出すように変化してはきましたが・・・。
 昭和五十七年、シーモールパレスのオープンとともに、生まれ育った博多から下関へ。これが次なる転機。縁あって結婚し家族ができてこの街に根を下ろすことになりましたが、豊かな食材に恵まれた下関のすばらしい環境が、私に新たな目標を持たせることになるのです。
(下関市・和欧風創作料理「日和庵」オーナーシェフ)
2006.6.19山口新聞掲載



山口新聞毎週月曜日連載中
シェフの隠し味1−悲喜こもごもの厨房 見えない部分に心血−
悲喜こもごもの厨房 見えない部分に心血
 「日和庵」を下関市にオープンさせて間もなく一年になろうとしています。この間、多くのお客様にご来店いただきありがとうございます。
 私の創作料理を少しは認知していただけましたでしょうか。だとすれば誠にうれしい限りです。
 料理の道に進んだ以上、いつかは自分の店をとの夢を抱き続けてきました。その念願がかなったわけですが、親しい方からは「こんな厳しい時代に経営者になって苦労するより、サラリーマンシェフのほうがよほど気楽だろうに」とのご意見も頂戴しました。
 なるほどそうかもしれません。しかし、自分の料理がお客様からどう評価されるのか、自分の思うままに作ってみたいという思いには勝てませんでした。
 サラリーマンシェフではどうしても制約があります。五感で楽しんでいただくレストラン、それが私の温めてきた夢ですが、オーナーシェフでなければ無理な話です。縁あって「日和庵」をオープンすることになったとき、ここなら私の食文化への思いが実現できるのではないかと直感しました。
 すでにご来店いただいたお客さまはよくお分かりのように、関門海峡を望むロケーションも最高です。
 よく「料理はこころで作るもの」と言います。自分の料理に愛情を注がない料理人がいるとは思いませんが、いかに心血を注いでも、百点満点が取れるとは限らない。そこが料理の難しいところです。しかも、お客さまのテーブルにお出しした時点で、もうやり直しはできません。
 同じ料理でも素材の良しあしだけでなく、自分の体調ひとつでさえも味の違いとなって出てしまう。その微妙な塩梅(あんばい)をいかに一定に、最高の状態でテーブルに乗せるか、一番当たり前のことでありながら一番難しい。そのお客さまの目に触れることのない過程こそが、私たち料理人にとって果てることのない日々の課題であり、作る料理は、精いっぱいの「答え」です。
 その答えに、お客さまから笑顔や言葉でマルがいただけたときの充実感。お叱りのバツをいただいてしまったときの焦燥感。いまだ修行の毎日だと実感します。
 普段お客さまにはお見せしない、そんな料理人の悲喜こもごも、見習い時代のエピソード、日和庵のことなど・・・。これから思いつくままにご紹介したいと思います。
 タイトルを「シェフの隠し味」としたのは、もうひと手間加えるそのものの意味と同時に、お客さまに隠れた部分がいかに大切なことなのか、その知られざる部分にも少し触れてみたいとの思いからです。そうしたことを踏まえて、この拙文を読んでいただけたらと思います。
 家庭で料理をもうひと工夫する方法や、簡単なレシピも時にはご紹介します。どうぞよろしく。
(下関市・和欧風創作料理「日和庵」オーナーシェフ)
2006.6.12山口新聞掲載


和欧風創作料理「日和庵」-Hiyorian- 〒750-0019 下関市丸山町5丁目3-19 TEL 0832-29-3388 FAX 0832-29-3389 定休日/水曜日 営業時間/11:30〜14:30〈オーダーストップ14:00〉 17:30〜22:00〈オーダーストップ21:00〉(ティールーム15:00〜17:00)(スカイバー 17:30〜24:00〈オーダーストップ23:00〉)E-mail:hiyorian.2@extra.ocn.ne.jp URL:http://www.hiyorian.com
和欧風創作料理「日和庵」-Hiyorian-URL:http://www.hiyorian.comE-mail:hiyorian.2@extra.ocn.ne.jp
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